↑前記事では全国平均で見ると戸建ての資産性は低いが、都内に限ると高いことを説明した。
もう1点、都内戸建ての優位性を示す話をする。
それは「築年数に伴う価格下落率」だ。
実は…築年数に伴う値下がりは、都内戸建てよりマンションの方が大きいのである。
例えば、以下グラフを見て「おっ、マンションは10年ちょいで2倍で売れるのか」と思ってないだろうか?それは実態と大きくかけ離れている。

このグラフはあくまでも「年ごとの平均的な取引価格」を示すものだ。
「2010年に買った物件が経年劣化しても2024年に2倍で売れる」というわけではなく、
「2010年にあった物件と全く同じ物件が2024年にあった場合、2倍で売れる」ということである。
実際は2010年に購入した物件は、2024年には14年分の経年劣化がある。
ただ、土地はどうだろうか?
戸建ての場合、「建物」と「土地」を切り離して考えられる。
建物:経年劣化する(価値が下がる)
土地:経年劣化しない(価格は上がるかも!?)
となるので、都内戸建てvsマンションに当てはめると、「土地比率が高い都内戸建ては、マンションよりも経年劣化の影響を受けにくい」という結論になる。
もちろん、これは土地価格・土地比率が高い「都内」戸建てに限る話であり、地方戸建ては別だ。
なので、マンションは上昇相場ではあるものの、土地という概念が無く劣化スピードが(都内戸建てよりは)早いので、総合的に考えると意外に差がない。
ということで、
・戸建てorマンションで悩んでいる方(特に資産価値観点で)
・ライフプランを組むうえで将来売却額を予測したい方
に、是非読んでいただきたい。
戸建ては「土地が良ければ全て良し」
調べると以下グラフが出てくる。これを見て「戸建てって資産価値ないじゃん」と思うのは早計だ。
このグラフの戸建ては「建物のみ」であり、実際は「土地+建物」である。

「土地+建物」の場合、以下のようなグラフ(図2)になる。土地は基本的に価値が一定のため、建物の価値が消滅した後は土地の価値が残り続ける形になる。そのため、戸建ての資産価値は土地に大きく依存する。

また、「木造は法定耐用年数的に20年で価値0になる」は昔の話で、築30~35年で0が今の主流だ。
実際、築20年の物件をSUUMOで見ると明らかに建物費用が含まれている。
現在では築20年で建物価格をゼロ円とするような乱暴な査定はほぼありません。(中略) 近年の戸建ての査定では、建物価格は「築30~35年」程度でゼロ円に達するという考え方が主流となっています。仮に経済的残存耐用年数を「30年」とした場合、中古戸建ての価格は以下の式で計算されます。
中古戸建ての価格 = 土地価格 + 新築価格 × (1 - 経過年数 ÷ 30年)
「土地建物比率」が肝
戸建ての資産価値=「土地+建物」で、土地の価値が一定ということは、「価格のうち土地が占める割合」が肝になる。この「土地建物比率」はエリアにより傾向が異なる。
以下図は2021年時点であり、最新状況は全国・首都圏どちらも建築費+400万だが(土地は+50万)、最新状況で土地建築比率はちょうど首都圏4:6・地方3:7(大半が建物)だった。
ただ、私が実際に品川区で建てた家は土地5200万・建物2500万(+付帯工事費200万)なので7:3だ。
むしろ大半が土地である。都内3階建ては大体そんな感じだと思う。
地方は土地が安いので予算に余裕があり豪華な2階建て(大手ハウスメーカーとか)、都内は土地が高すぎて必然的にローコスト3階建て(地元の工務店)、といった印象を受ける。

土地比率別シミュレーション
戸建てはなぜ土地建物比率が重要なのか?
それは土地の比率が資産価値に直結するからだ。
以下3パターンで価格下落率を比較してみる。
①土地比率7割(土地5200万・建物2500万) →都内戸建て想定
②土地比率4割(土地1500万・建物2500万) →地方戸建て想定
③土地比率2割(土地1000万・建物4000万) →田舎豪華戸建て想定
※建物は経済的残存耐用年数30年の価格計算式に基づく
※土地の価格は一定とする
※住宅ローンは35年元利均等返済

①は土地の下支えにより下落率がぐっと抑えられている。30年経過後も目減りはたった3割だ。
「土地の価値が一定」という前提だが、むしろ都内は上昇してる(年平均+2~3%)ので現実的な予測かと思う。
②は同じ建物なのに価値が半減している。人口減が見込まれる地域は「土地の価値が一定」という前提が崩れるため、より下落する可能性もある。
また、注目すべきは「住宅ローン残高との兼ね合い」だ。
不動産における一番のリスクは「売れない(売ってもローンが残る)」だと思う。何らかの理由(リストラ・病気・離婚etc)で売却せざるを得ない場合に売却できないと本当に困る。そのリスク回避のために私は資産価値を最重要視している。
①は売却時にローンが残るリスクは少ないが、③はギリギリだ。厳密には下落率の傾きは一定ではないのでオーバーローンの場合もあるだろう。
最悪なケースは「ローン年収比率ギリギリのフルローンで、③のような土地比率が低い戸建てを購入すること」だ。手持ち資金があれば問題ないが、手持ち資金無しフルローンの低資産価値物件は相当リスキーである。
ということで、土地比率を高めれば、築年数経過しても資産価値が残る戸建てになる。都内戸建ての資産価値が高いのは「土地比率が高いこと」が要因の一つである。
戸建てvsマンション 価格下落率比較
続いてマンションの下落率を見てみる。
以下グラフは実データに基づいた23区の戸建て・マンションの「築年数経過に伴う価格(㎡単価)下落率」の比較である。
※あくまで「今現在」の築年数別価格であり時系列データではないため、相場上昇などの要因は含まれていない

http://www.reins.or.jp/library/nmw2023.html
実はマンションの方が下落率が高いのである。
RC造は法定耐用年数47年のため、建物同士の比較では圧倒的マンション有利だが、土地込みの比較では土地比率が高い都内戸建てが有利となる。
ただ、築年数経過に伴う下落がある一方で、上昇相場のため、総合的に考える必要がある。
ちなみに、先ほどの戸建てシミュレーション①と実データの比較では、築30年までは実データの方が価格が高い(築31年~は建物取り壊し費用分だけ価値減少?)。それだけ需要があるのだと思われる。
戸建てvsマンション 数年後売却額を推定
不動産価格指数に築年数経過に伴う価格下落率をかければ、実際の売却額目安が分かる。
まず、前記事の不動産価格指数推移を再掲する(品川区推定値の記載版)。

例えば、マンションは2024年時点で価格が2010年の2.1倍ですが、「2010年に購入したマンションが2024年に2.1倍で売却できる」わけではない。14年経過すると-27.1%(築5年から14年経過時の平均下落率)価格が下落するので、1.6倍程度のはずだ。
戸建ては1.6倍のため-15.8%で1.4倍だ。
そのため以下イメージとなる。
マンションは、築年数経過に伴う価格下落率を考慮すると大きく下方修正となった。

マンションは築年数経過に伴う下落幅が大きいが、それ以上の価格上昇がある。そのためマンションの資産性はやはり高いのだが、グラフの通り戸建てとの差はかなり縮まっている。
全国平均だとマンション2倍・戸建て1.2倍だったのが、品川区かつ下落率を考慮すると、マンション1.6倍・戸建て1.4倍だ。
わずか0.2倍の差‼️である。
私は最初このグラフを見て「数年後2倍になるからマンション!(適当)」と考えていたので驚きの結果だった。2倍と1.2倍ならまだしも、1.6倍と1.4倍の差であれば、話は変わってくる。
で、私は「資産価値の差はそこまでない」「マンションはリセール良いが高すぎ」なことから都内戸建てを購入した。
高いということは、その分築年数・広さなどの「質」を犠牲にするということだ。あくまで目的は「家で金儲け」ではなく「良い家にお得に住む」であり、0.2倍の差のために住みたくない家に住むのは、なんか違うなぁと思った。
参考になれば幸いです🙇♂️
総合的な結論
※2010年購入築5年物件の2024年売却額推定値
・戸建て(品川区・徒歩10分)
2024年不動産価格指数(2010年=100)は全国平均で115.0。東京に限定すると132.6。
推測を含むが、品川区だと+13.5%、徒歩10分以内で+4.1%。14年経過で-15.8%
→品川区・徒歩10分以内の戸建ては
132.6×(1+13.5%+4.1%-15.8%)=135.0程度(2010年価格の1.4倍)
・マンション(品川区・徒歩10分)
2024年不動産価格指数(2010年=100)は全国平均で202.2。東京に限定すると204.0。
推測を含むが、品川区だと+2.7%、徒歩10分以内で+1.2%。14年経過で-27.1%
→品川区・徒歩10分以内のマンションは
204.0×(1+2.7%+1.2%-27.1%)=156.7程度(2010年価格の1.6倍)
※品川区以外で比較したい場合は、記事①の「品川区はどうなの?」の㎡単価表をご参照ください
実際の物件で検証(おまけ)
実際の物件が推定値通りか見てみる。「新築」からの下落率だが、築14年前後の品川区マンションは大体新築価格の1.5~1.6倍なので、割と合ってそうだ。


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